Shikata Ga Nai

Private? There is no such things.

第8回:データ前処理とは?企業の文書を整える方法

Hello there, ('ω')ノ

~そのままでは使えない文章を、LLM用に変えるステップ~

「LLMの学習には“質の良いデータ”が重要」──これは繰り返しお伝えしてきました。 では、その質を高めるためにまず取り組むべきことは何か?

答えは、データ前処理(Preprocessing)です。


🧼 「データ前処理」とは何をする作業?

データ前処理とは、一言でいえば:

生の文書データからノイズやムラを取り除き、学習しやすい形に変える作業

です。

人間が読むには問題ない文書でも、AIには理解しづらい形式がたくさんあります。 前処理では、それらを標準化・簡素化・構造化して、モデルにとって「おいしい教材」に変えていきます。


🛠 企業文書の前処理でよく使う処理一覧

前処理項目 具体的にやること 目的
小文字化・正規化 英字をすべて小文字に/全角・半角の統一など 表記ゆれを減らす
記号や不要文字の除去 「★」「※」「😊」など意味のない記号を取り除く ノイズ削減
スペース・改行の整理 無駄な空白や連続改行を削除 文構造をきれいに保つ
句読点の補完・統一 「ですます」「である」の混在や句点の抜けを修正 文の読みやすさ向上
トークン化 文を単語や文節に分解(例:形態素解析) モデルへの入力形式に変換
ストップワード除去 「です」「のに」「しかし」などを省略(場合により) 意味の薄い単語を削除
数字や日付の正規化 「二千二十三年」→「2023年」、「5万円」→「50000円」 数値の比較をしやすくする
文書の一貫性チェック 書きかけの文章、途中で切れているものを削除 LLMが誤って学習しないようにする

🔎 ポイント:前処理は「削る」ことが目的ではなく、「理解しやすく整える」ことが目的です。


🏢 実際の企業文書を例に:整える前 vs 整えた後

原文(整えていない状態):

※至急確認ください!(><)
この件、↑担当誰だっけ?
2023/4/1対応予定 未完了?!

前処理後:

この件については担当者の確認が必要です。
2023年4月1日対応予定ですが、未完了の可能性があります。

違いは一目瞭然。 人間には読める原文でも、LLMにとっては記号・略語・不完全な文章は「ノイズ」です。 自然な日本語に整えてから学習させることで、より安定した、信頼性の高い出力が得られるようになります。


🤖 よくある前処理の自動化ツール・ライブラリ

ツール名 用途 特徴
spaCy(スパシー) 文の構造解析・分かち書きなど 高速・軽量な自然言語処理ライブラリ
NLTK トークン化・前処理全般 英語中心だが参考になる構文多数
janome 日本語形態素解析 シンプルで導入しやすい
sudachiPy 日本語の高精度な分かち書き 複雑な文にも対応可能

Pythonなどの簡単なコードで、大量の文書を自動的に整形することも可能です。


🔐 セキュリティとプライバシーにも注意

前処理の段階では、個人情報や機密情報が紛れていないかの確認も重要です。

たとえば、

  • 「山田太郎」「03-1234-5678」などの実名や電話番号
  • 「顧客リスト」「契約金額」などの社外秘データ

こうした情報がそのままLLMに学習されると、不意に出力されてしまうリスクがあります。

➡ 対策:

  • 自動マスキング(例:「[氏名]」「[電話番号]」などに置換)
  • 正規表現やツールを使った検出・除去

✅ まとめ:前処理は“モデルの下ごしらえ”

  • データ前処理は「モデルが読みやすい状態」に整える作業
  • 表記の揺れ、ノイズ、形式の違いなどを統一・修正
  • 結果として、出力の質・一貫性・信頼性が大きく向上する
  • 自動化ツールやチェックリストを活用して効率的に進めよう

Best regards, (^^ゞ