Hello there, ('ω')ノ
~そのままでは使えない文章を、LLM用に変えるステップ~
「LLMの学習には“質の良いデータ”が重要」──これは繰り返しお伝えしてきました。 では、その質を高めるためにまず取り組むべきことは何か?
答えは、データ前処理(Preprocessing)です。
🧼 「データ前処理」とは何をする作業?
データ前処理とは、一言でいえば:
生の文書データからノイズやムラを取り除き、学習しやすい形に変える作業
です。
人間が読むには問題ない文書でも、AIには理解しづらい形式がたくさんあります。 前処理では、それらを標準化・簡素化・構造化して、モデルにとって「おいしい教材」に変えていきます。
🛠 企業文書の前処理でよく使う処理一覧
前処理項目 | 具体的にやること | 目的 |
---|---|---|
小文字化・正規化 | 英字をすべて小文字に/全角・半角の統一など | 表記ゆれを減らす |
記号や不要文字の除去 | 「★」「※」「😊」など意味のない記号を取り除く | ノイズ削減 |
スペース・改行の整理 | 無駄な空白や連続改行を削除 | 文構造をきれいに保つ |
句読点の補完・統一 | 「ですます」「である」の混在や句点の抜けを修正 | 文の読みやすさ向上 |
トークン化 | 文を単語や文節に分解(例:形態素解析) | モデルへの入力形式に変換 |
ストップワード除去 | 「です」「のに」「しかし」などを省略(場合により) | 意味の薄い単語を削除 |
数字や日付の正規化 | 「二千二十三年」→「2023年」、「5万円」→「50000円」 | 数値の比較をしやすくする |
文書の一貫性チェック | 書きかけの文章、途中で切れているものを削除 | LLMが誤って学習しないようにする |
🔎 ポイント:前処理は「削る」ことが目的ではなく、「理解しやすく整える」ことが目的です。
🏢 実際の企業文書を例に:整える前 vs 整えた後
原文(整えていない状態):
※至急確認ください!(><) この件、↑担当誰だっけ? 2023/4/1対応予定 未完了?!
前処理後:
この件については担当者の確認が必要です。 2023年4月1日対応予定ですが、未完了の可能性があります。
違いは一目瞭然。 人間には読める原文でも、LLMにとっては記号・略語・不完全な文章は「ノイズ」です。 自然な日本語に整えてから学習させることで、より安定した、信頼性の高い出力が得られるようになります。
🤖 よくある前処理の自動化ツール・ライブラリ
ツール名 | 用途 | 特徴 |
---|---|---|
spaCy(スパシー) | 文の構造解析・分かち書きなど | 高速・軽量な自然言語処理ライブラリ |
NLTK | トークン化・前処理全般 | 英語中心だが参考になる構文多数 |
janome | 日本語形態素解析 | シンプルで導入しやすい |
sudachiPy | 日本語の高精度な分かち書き | 複雑な文にも対応可能 |
Pythonなどの簡単なコードで、大量の文書を自動的に整形することも可能です。
🔐 セキュリティとプライバシーにも注意
前処理の段階では、個人情報や機密情報が紛れていないかの確認も重要です。
たとえば、
- 「山田太郎」「03-1234-5678」などの実名や電話番号
- 「顧客リスト」「契約金額」などの社外秘データ
こうした情報がそのままLLMに学習されると、不意に出力されてしまうリスクがあります。
➡ 対策:
- 自動マスキング(例:「[氏名]」「[電話番号]」などに置換)
- 正規表現やツールを使った検出・除去
✅ まとめ:前処理は“モデルの下ごしらえ”
- データ前処理は「モデルが読みやすい状態」に整える作業
- 表記の揺れ、ノイズ、形式の違いなどを統一・修正
- 結果として、出力の質・一貫性・信頼性が大きく向上する
- 自動化ツールやチェックリストを活用して効率的に進めよう
Best regards, (^^ゞ