Shikata Ga Nai

Private? There is no such things.

第6回:なぜデータの品質がLLM性能を左右するのか?

Hello there, ('ω')ノ

「AIはデータが命」とよく言われますが、LLM(大規模言語モデル)ではそれが文字どおりの意味を持ちます。 どんなに優れたモデルでも、与えられたデータが悪ければ、その出力もまた悪くなるのです。


📦 モデルは「学んだことしか知らない」

LLMは、インターネット上や社内にあるテキストを読み込んで「言葉の使い方」を学習します。

例えるなら、「大量の文章を読んで賢くなったAIの作文屋さん」です。 つまり、こうしたAIが生成する答えは──

これまで見た文章から「それっぽい答え」を作っているだけ

とも言えます。

🔍 だからこそ重要なのが、 「どんなデータを読ませたか」=モデルの価値観・知識の土台になるという点です。


💬 データ品質が悪いとどうなる?

低品質なデータを使うと、以下のような現象が起こります:

問題例 モデルのふるまい
文法ミスだらけの文章 変な日本語を生成するようになる
同じ文章の繰り返し 単調で偏った出力になる
情報が古い 現在とズレた内容を出力する
差別的・偏見的な表現 不適切な表現を再現してしまう

🧪 実際の研究でも、ノイズが多いデータを使うと精度が大きく下がることが報告されています。 学習済みモデルに与えるデータがどれだけ「きれい」で「意味がある」かが極めて重要なのです。


🧠 実験:データが違うだけでここまで変わる!

簡単な実験を例にしてみましょう。

# 例:モデルが「The quick brown fox jumps over the lazy dog.」と
# 「Th3 qu1ck br0wn f0x jumps 0ver th3 l@zy d0g.」を読んだとき

clean_text = "The quick brown fox jumps over the lazy dog."
noisy_text = "Th3 qu1ck br0wn f0x jumps 0ver th3 l@zy d0g."

この2つの文は、意味としては同じように見えても、AIにとっては全く別のものです。 正しい文を読んだモデルはスムーズに意味を理解できますが、ノイズが混じった文では「何のことか分からない」という状態になります。

結果として、「意味不明な出力」や「論理が破綻した文章」になる可能性が高まります。


🧼 「データ品質の高さ」とは何を意味するか?

LLM開発における“良いデータ”とは、以下のような特徴を持つものです:

良いデータの条件 解説
文法的に正しい 日本語として自然で読みやすい文章である
内容が一貫している 話の流れや論理が破綻していない
重複が少ない 同じ表現の繰り返しがない
ノイズがない 絵文字・崩し字・誤変換などが含まれていない
最新の情報である 実際の業務や制度に即している
偏りが少ない 特定の立場に寄りすぎない

🧭 高品質データは「3つの軸」で整える

  1. 表面のきれいさ(文法・形式)  → 文体の統一、記号の正規化、誤字脱字の除去など

  2. 意味の妥当性(内容の信頼性)  → 不正確・古い・重複した情報の除外

  3. 多様性の確保(学習効果の幅)  → 文の長さ、話し方、表現スタイルなどのバリエーション


🛠 企業で起こりがちな“データの落とし穴”

企業で社内文書を学習させるとき、意外と次のような問題が見つかります:

  • 形式がバラバラなExcelやWordが混ざっている
  • 古い規程や廃止済みマニュアルが含まれている
  • 特定の部署や人の表現が偏っている
  • 手書きや画像が混在している

→ これらは、モデルにとっては「意味不明」または「間違った学習素材」となる可能性が高いのです。


✅ まとめ:データ品質=LLMの知性の“土台”

  • LLMは「学んだもの」しか知らない
  • 良いデータからは、正確・自然な出力が得られる
  • 悪いデータは、誤解・バイアス・暴走の原因に
  • まず最初に整えるべきは「データの品質」である

Best regards, (^^ゞ