Shikata Ga Nai

Private? There is no such things.

第67回:モバイルMDM管理下での診断の注意点

Hello there, ('ω')ノ

✅ MDMとは?ざっくり整理

MDM(モバイルデバイス管理)とは

企業が配布するスマートフォンやタブレットを一元的に管理するための仕組みで、主に以下の制御が可能です:

項目 内容
アプリ配信制御 指定されたアプリ以外インストール禁止
USBデバッグ無効化 開発者モードやADB接続をロック
ネットワーク制限 特定のWi-FiやVPNしか利用不可
クリップボード制御 コピー&ペーストを制限
画面録画・スクショ禁止 操作ログや画面情報を保護
リモートワイプ 紛失時の遠隔初期化機能

⚠️ 診断時によくある“詰まりポイント”

1. USBデバッグが使えない

  • ADBが無効化されていると、診断ツール(adb, drozer, Frida, Burp など)が端末と通信できません。

2. アプリのインストール制限

  • 独自のテスト用アプリや改造版APK(再署名済み)をインストールできない設定になっている。

3. ネットワーク通信が遮断される

  • Wi-Fiプロキシを強制する設定や、VPN経由以外の通信を遮断する制限により、Burp Suiteなどのプロキシ診断が機能しないケースも。

🧪 診断を行う3つのパターンとその考え方

パターン 推奨度 説明
① MDM適用外のテスト端末で実施 最も柔軟。制限なしに全手法を試せる
② MDMの“一部制限のみ”有効な端末 プロキシやUSBデバッグだけ開放した設定
③ 本番と同一のMDM制限下で診断 実環境の動作再現には有効。ただし制限多い

※理想は「①+③の組み合わせ」:制限なしで脆弱性を洗い出し → 制限下で再現・確認する二段構え。


✅ 実施前のチェックリスト

  • [ ] MDMポリシーを確認し、開発者モードの可否を把握
  • [ ] ADBの有効化・証明書のインストールができるか確認
  • [ ] Wi-FiやVPNでBurp Suiteなどのプロキシが通るかチェック
  • [ ] テスト用APKの導入許可があるか?(再署名対応済みか?)
  • [ ] 社内セキュリティチームとの連携は取れているか?

✅ MDM環境下で使える診断テクニック(制限付きでも可能な方法)

技術 説明
MobSF APK単体での静的解析なら、端末不要でOK
Frida(Remote Inject) Frida Serverを別端末から実行可能なら診断可能
Burp Suite(VPNプロファイル経由) CA証明書がインストールできるMDMならMITM解析が可能
Runtime Hooking(Frida, Xposed) 制限を受けにくい環境なら有効(ただし注意)

🧭 現場での進め方:診断とMDMの“共存”方法

  1. MDM管理者と事前に調整する

    • MDM管理側が“診断目的の例外設定”を用意してくれることもあります。
  2. 制限付き診断で見つからなかった項目を補完

    • 例えば、「外部ストレージへの書き込み禁止」により、一見問題がないように見えてしまう場合もあるため、制限のない環境での検証結果を併用
  3. MDMによる防御に頼りすぎない

    • MDMが防いでくれている脆弱性も、BYOD端末や未管理端末では成立するリスクがあるため、アプリ単体での安全性も必ずチェック。

✅ まとめ

  • MDM環境では「診断ツールが使えない」「プロキシ通信ができない」といった制約が多い
  • 完全な診断を行うには、制限のないテスト端末が不可欠
  • ただし、MDMの実環境に近い端末での再現テストも同様に重要
  • 診断対象がMDM配布アプリである場合は、管理ポリシーを把握した上で診断戦略を立てることが鍵

Best regards, (^^ゞ