Shikata Ga Nai

Private? There is no such things.

第56回:ReWOo(観察なしの推論)

Hello there, ('ω')ノ

~AIが「結果を見ずに」推論する理由と利点とは?~

これまで紹介してきたReAct(Reason + Act)では、AIが外部行動を起こし、その結果(Observation)を見て再推論するという流れが中心でした。 それに対して、今回の「ReWOo」では──

あえて“観察”をせずに、行動を計画し、最後まで思考を完結させる

という真逆の発想を採用します。


🤔 ReWOoとは?

✅ 正式には:

Reasoning Without Observation(観察なしの推論)外部環境からのフィードバックなしで、AIが自ら考え抜く推論設計手法

✅ 背景:

ReActでは、毎回「行動→結果→再思考」という手順が必要になりますが、

  • APIの呼び出し回数が多い
  • 実行時間が長い
  • セキュリティ上、外部との通信が許されない

…というケースでは、「観察」を省略した思考モデルが有効になります。


🌱 ReWOoの基本的な考え方

ReWOoでは、次のような流れで推論が進みます:

  1. 問題を読み取り、解決に必要な行動を“想像”する
  2. その行動の“結果も想像”する(予測)
  3. 観察を行わず、仮定のもとで推論を進めて、最終的な回答を導く

つまり、AIが“頭の中だけで行動シミュレーション”を行うイメージです。


📚 ReActとの違いを比較

項目 ReAct(Reason + Act + Observation) ReWOo(Reason without Observation)
観察の有無 行動後に実際の結果を受け取る 結果は予測・想像で済ませる
外部リソース 必須(検索API、DBなど) 不要(推論だけで完結)
精度 現実に近くなりやすい 想像に頼る分、やや不確実性あり
利点 柔軟・正確 速く・セキュアで・軽量

💼 ReWOoが活躍する実務シーン

シーン 活用理由
オフライン環境のナレッジ応答 外部アクセスなしでも“仮想的に”情報を使える
社内研修用AI 想定事例をもとに判断・解釈だけで完結
文書チェック・レビュー 「もしこうなっていたら…」を仮想的に処理
プランニング・意思決定支援 情報に基づく複数シナリオを頭の中で展開し比較

🧠 ReWOoのプロンプト設計の工夫

✅ 基本構造(日本語例)

Q: 新しい社員向けに、社内設備の説明案内を考えてください。

思考: まず、新入社員が必要とする設備は何か想定します。次に、説明文の構成を考えます。  
行動の想定: オフィス案内ツアーをする場合、会議室・食堂・ロッカーなどの順に案内するのがよいでしょう。  
最終回答: はじめにロッカーの場所をご案内し、その後に...(以下略)

➡ 実際には行動していませんが、行動と結果を“仮想的に想定”して思考を進めています。


🛠 ReWOoがもつ強みと限界

項目 内容
✅ 強み ・API不要で動作が軽い
・即時応答が可能
・セキュリティリスクが低い
・オフライン運用やファイアウォール内でも使える
⚠ 限界 ・外部情報が古い or 不完全な場合に精度が下がる
・“想像”による誤解・勘違いが起こることもある
・更新された情報を反映しにくい

🔁 ReActとReWOoの併用もおすすめ

業務によっては:

  • 初回はReWOoで仮説を立てる
  • 必要ならReActで事実確認を行う

…というように、両方を段階的に使い分ける戦略が実践的です。


✅ まとめ:観察なき推論で、素早く・軽く・安全に

  • ReWOoは「考えるだけで完結」する推論スタイル
  • 外部APIを使わないため、高速・セキュア・軽量という利点がある
  • 想定ベースなので、不確実性への注意と“割り切り”が必要
  • プランニング・研修・レビューなど、“仮想判断”が中心の業務に最適

Best regards, (^^ゞ