Shikata Ga Nai

Private? There is no such things.

第36回:モデル最適化の成功と失敗のパターン

Hello there, ('ω')ノ

~「軽くして速くしたのに精度が落ちた…」を防ぐために~

LLMの導入や運用では、「性能はそのままで軽く・速く・安くしたい」というニーズが非常に多いです。 これを叶えるのが「モデル最適化」ですが、実はやり方を間違えると逆効果になることもあります。


✅ 成功パターン①:軽量化しても応答品質が維持できている

方法 ポイント
✅ INT8量子化 精度をほぼ保ちつつ、メモリと速度を最適化
✅ 7Bモデル以下の選定 軽量でも日常業務に十分な性能を確保
✅ 推論用途に特化 学習機能は捨てて割り切り設計にする

🎯 成功の理由: 目的(推論用途)に対して過剰な構成を避けたため、スリムな構成でもバランスが良かった。


❌ 失敗パターン①:量子化で精度が大きく落ちた

失敗例 原因
INT4モデルで文章生成したら文法が崩れる モデル自体が小さすぎて性能不足 or 精度が許容外
量子化済みモデルにLoRAを適用しようとしたがうまくいかない LoRAは通常FP16やINT8ベースのモデルが前提

⚠️ 対応策:

  • 使用目的と精度許容範囲に応じて量子化レベルを選ぶ(INT8が無難)
  • 量子化モデル用に最適化されたLoRAレイヤーを使う or 非量子化モデルでLoRA調整

✅ 成功パターン②:LoRAで文体や業務対応をカスタマイズ

方法 ポイント
✅ 基本モデルの知識をそのまま活かす
✅ 出力層だけ変更してコスト削減
✅ 社内QAに最適化して応答精度が向上

🎯 成功の理由: 「全部学習させず、必要な部分だけ調整」という効率的な戦略が効果を発揮。


❌ 失敗パターン②:ファインチューニングで元の知識を失う

失敗例 原因
新しい業務知識を追加したら、以前の一般知識応答ができなくなった 忘却問題(catastrophic forgetting)
全レイヤー更新をして過学習した 少量データでのフルチューニングはリスク大

⚠️ 対応策:

  • レイヤー凍結LoRAによる差分学習を活用し、元の知識を保持
  • リハーサル法などで古い知識も再学習に含める

✅ 成功パターン③:RAG構成で「軽いモデル」に知識を補完

方法 ポイント
✅ モデル自体は量子化済み軽量モデル(例:7B)
✅ 社内文書を検索して回答に活用(検索拡張生成)
✅ 回答の正確性と業務適応性が大幅向上

🎯 成功の理由: モデル自体に知識を詰め込まず、外部から参照することで性能をカバーした好例。


❌ 失敗パターン③:軽量化しすぎて対応不能に

失敗例 原因
TinyLLaMA(1B未満)を使って高難度な問い合わせを処理しようとした モデルサイズが小さすぎて抽象処理ができない
量子化モデルにプルーニングを重ねてさらに精度劣化 過剰最適化による“劣化スパイラル”

⚠️ 対応策:

  • 最低限必要なモデルサイズ(3B〜7B)を確保
  • 軽量化は段階的に行い、精度評価を必ず実施

✅ モデル最適化 成功のための原則5か条

  1. 最適化の目的を明確に(軽さ?速さ?精度?)
  2. 単独の手法で試し、組み合わせは段階的に
  3. チェックポイント保存+比較評価で変化を見える化
  4. 軽量化は「できるだけ、しかしやりすぎない」
  5. 業務要件に応じて、モデルに頼るか、外部に頼るかを選ぶ(RAG戦略)

✅ まとめ:最適化の「正解」は1つではない

  • モデル最適化にはさまざまな手法があるが、「目的に合った戦略」を選ばなければ逆効果になる
  • 成功パターンの多くは、「部分的に適用」「評価しながら少しずつ進めた」ケース
  • 精度・速度・コストの“3すくみ”をうまくバランスする戦略設計がカギ

Best regards, (^^ゞ