Shikata Ga Nai

Private? There is no such things.

第31回:継続学習と「忘却問題」への対応

Hello there, ('ω')ノ

~AIは新しい知識を学ぶたびに、昔のことを忘れてしまうのか?~

「新しいFAQを学習させたら、前に覚えていたことを答えなくなった」 「追加学習したはずなのに、以前の応答がおかしくなった」

このような現象が起きたことはありませんか?

それは、「忘却問題(catastrophic forgetting)」と呼ばれる、AIにおける“学習の副作用”です。


🤖 継続学習とは?

✅ 一言でいうと:

「すでに学習済みのモデルに、新しい知識を後から追加学習すること」

例えば、2024年時点で学習済みのLLMに「2025年の新しい制度」や「社内の最新ルール」を学ばせる── このようなケースで使われるのが「継続学習(continual learning)」です。


😨 忘却問題とは?

✅ 一言でいえば:

「新しいことを学習する過程で、以前覚えていた内容を失ってしまう現象」

人間で言えば、「新しい語学を覚えたら、前に覚えた単語が思い出せなくなる」ようなもの。

AIモデルでは特に深刻で、**新しいデータを学習するだけで古い知識が“上書きされて消える”**という問題が起きやすいのです。


🧪 なぜ忘却が起きるのか?

原因 説明
全パラメータが再調整される 追加学習時に“モデル全体”が書き換わるため、過去の知識まで影響を受ける
古いデータが一緒に使われない 新しいデータ“だけ”で学習すると、過去データの重要性が反映されない
ファインチューニングの影響範囲が広すぎる 特に全層更新をすると、既存の応答スタイルまで変わることがある

🛠 忘却を防ぐ4つのアプローチ

リハーサル法(復習型)

  • 過去のデータの一部も一緒に再学習させる方法
  • 「古い記憶をちょっと復習しながら、新しいことを覚える」イメージ

✅ 実務ヒント: → 過去の重要なQAペアを代表例として少しだけ混ぜて学習データに加える


凍結戦略(レイヤーフリーズ)との併用

  • 前回紹介したレイヤー凍結を活用し、基礎的な知識を保持する層は触らずに新しい知識だけ学習

✅ 実務ヒント: → 出力層だけを更新して新しい表現を加えるだけに留めると、古い知識の消失を抑えられる


差分学習(adapter / LoRA の活用)

  • モデル本体はそのままに、追加知識を別モジュールとして“後付け”する

✅ メリット: → 古いモデルを壊さずに、新しい応答を付け加えることが可能 → 複数の業務部門ごとのバージョン管理にも便利!


評価とスナップショット保存

  • 学習前に「基準となる出力」を保存し、新しい学習後に変化を検証
  • 不具合があればチェックポイントから復元できるようにしておく

✅ 実務ヒント: → ファインチューニングごとに「前後の比較ログ」を作成しておくと安心


💼 業務での活用ケース例

ケース 解決アプローチ
社内ルールが年度ごとに変わる リハーサル法+LoRAで新旧両対応モデルを作る
新製品情報だけ追加したい 出力層のみ微調整 or adapter型で追加
応答品質が急に落ちた スナップショットと比較して学習過程を見直す

✅ まとめ:「新しく教える」だけでは不十分。過去を忘れさせない設計を

  • 継続学習は、AIにあとから知識を加える便利な方法
  • ただし、うまく設計しないと「忘却問題」が起きやすい
  • リハーサル法・凍結戦略・差分学習の組み合わせで、**“学びながら忘れないAI”**を作ろう
  • 出力評価と履歴管理も忘れずに。継続学習は運用の仕組み化が鍵です

Best regards, (^^ゞ