Shikata Ga Nai

Private? There is no such things.

第29回:ファインチューニングとは?業務特化モデルの作り方

Hello there, ('ω')ノ

~汎用AIを“自社に最適化”する実践アプローチ~

ChatGPTやClaudeのようなLLMは非常に便利ですが、 「うちの業務用語にはちょっと弱い…」 「社内ルールや文脈に合わせた回答ができない…」

こんな課題を感じたことはありませんか?

そこで登場するのが「ファインチューニング(微調整)」という手法です。


🧠 ファインチューニングとは?

✅ 一言でいえば:

「既に賢いモデルに、自社の知識を追加して“専門家にする”学習」

ChatGPTのようなLLMは、膨大なデータで事前学習されています。 ファインチューニングは、その完成済みのモデルに“追加の知識”を教え込むプロセスです。

いわば、「基礎学力の高いAIに、専門研修を受けさせる」ようなものです。


🏢 業務での具体的な活用例

業務分野 ファインチューニングで実現できること
カスタマーサポート 自社の問い合わせ対応履歴から、的確な回答ができるAIに
法務・契約 社内独自の契約用語や構成を理解して文章を生成
製品マニュアル 製品名や仕様に沿った案内文を自動生成
社内FAQ 社員からのよくある質問にピンポイントで応答

🔄 ファインチューニングと類似手法の違い

手法 特徴 向いているケース
ファインチューニング モデルのパラメータ自体を調整する 固定的な業務パターンが多いとき
RAG(検索拡張生成) 検索で社内データを引っ張って回答 動的・頻繁に更新される情報があるとき
プロンプトエンジニアリング 指示の工夫だけで応答改善 まず手軽に試したい場合に有効

RAGやプロンプト設計との組み合わせもおすすめです。


🛠 ファインチューニングの基本ステップ

① 教師データを用意する

  • 形式例(ChatGPT用)
{"messages": [{"role": "user", "content": "返品したいのですが"}, {"role": "assistant", "content": "承知しました。注文番号をお知らせください。"}]}
  • 自社のチャット履歴、メール文、QA記録などから抽出して整形

② クリーニングと整形

  • 表記ゆれ、誤字、個人情報などを修正・マスク
  • 長すぎる文やあいまいな表現はカットする

③ モデルの選定

  • OpenAI(gpt-3.5-turbo など)
  • Hugging Face(LLaMA系、Mistralなど)
  • 日本語特化型(ELYZA, rinna など)も用途に応じて検討

④ 学習パラメータの調整(ハイパーパラメータ)

  • 学習率(Learning rate)
  • エポック数(何回繰り返すか)
  • バッチサイズ(まとめて処理する件数) → 前回解説の正則化やチェックポイント戦略と連携して設計!

⑤ モデルの評価と改善

  • テスト用データで出力を確認(正確さ・トーン・適応性など)
  • フィードバックをもとに再学習や調整を繰り返す

✅ ファインチューニングのメリットと注意点

メリット 内容
応答が安定する 社内データに特化するため、変動が少ない
RAG不要になる場面も 検索なしで応答できる内容が増える
カスタマイズ性が高い トーン、文体、出力形式も調整可能
注意点 内容
実行にコストがかかる GPU環境やAPI利用料金が必要になることも
定期的な更新が必要 社内ルールや製品変更に追いつくため
元のモデルによって制約あり 商用利用や公開範囲はライセンス確認が必要

💡 補足:軽量なファインチューニング手法も

  • LoRA(Low-Rank Adaptation):モデル全体でなく、一部だけ学習してコスト削減
  • PEFT(Parameter-Efficient Fine-Tuning):メモリ使用量を抑えて高精度にチューニング可能 → 限られたリソースでも実現できる「現実的な選択肢」として注目されています。

✅ まとめ:AIに“うちのやり方”を教える方法、それがファインチューニング

  • ファインチューニングは、LLMを自社の業務に合わせて育てる方法
  • 問い合わせ、契約、社内文書などをモデルに“理解させる”ことができる
  • 正しく設計すれば、高い応答精度+業務効率の大幅アップが期待できる
  • 実行コストや運用面の設計を工夫しながら、少しずつ導入がおすすめ

Best regards, (^^ゞ