Shikata Ga Nai

Private? There is no such things.

第28回:分散学習でのチェックポイント戦略

Hello there, ('ω')ノ

~AIの“大規模学習”を止めずに、無駄なく・安全に育てるために~

AIモデルのサイズが大きくなるにつれて、学習にも「分散処理」が欠かせなくなってきました。 1台のPCやGPUでは手に負えず、複数台のサーバーやGPUを同時に動かして学習する「分散学習」が標準となりつつあります。

こうした状況下で重要なのが、「もし途中で止まってしまったら?」「途中から再開できるようにするにはどうする?」というチェックポイント戦略です。


🧠 そもそも分散学習とは?

分散学習とは、一つのモデルを複数の計算機(サーバーやGPU)に分けて並列処理し、高速かつ大規模に学習を進める手法です。

方式 内容
データ並列(Data Parallel) 同じモデルに異なるデータを割り当てて同時学習
モデル並列(Model Parallel) モデルそのものを分割して並列に学習
ハイブリッド型 上記2つの組み合わせ(LLMで多用)

⚠️ 分散学習におけるチェックポイントの課題

単一のマシンでのチェックポイントと違い、分散環境では以下のような問題が起こります:

課題 内容
複数プロセスの同期 各ノードの状態を揃えて保存しないと復元できない
ファイルが膨大 各GPU分のファイルが生成され、管理が煩雑に
保存タイミングの調整 全体の状態が揃っていないと不整合が起きる
通信のオーバーヘッド 保存のための通信が学習を妨げる場合もある

つまり、単に「保存すればいい」という話ではなく、設計が重要になります。


✅ チェックポイント戦略:3つの基本方針

① 同期チェックポイント(同期型)

すべてのノード・プロセスが一斉に「はい、保存します」と同じタイミングで状態を保存します。

メリット: 確実に整った状態で保存される デメリット: 遅いノードが足を引っ張る(同期コストが高い)


② 非同期チェックポイント(非同期型)

各プロセスが独立して保存し、あとから再構築できるように設計する。

メリット: 学習が止まりにくくスムーズ デメリット: 状態の復元に工夫が必要。整合性を確認する処理が求められる


③ 集中保存型(マスターノード保存)

各ノードの結果を集めて、マスターノード(統括する親ノード)だけが保存処理を担当する形式。

メリット: ファイル構造がシンプルで管理しやすい デメリット: 通信量が集中する。ボトルネックになる可能性


🧰 実装時のベストプラクティス

戦略 実務での工夫ポイント
保存頻度 頻度を下げて「意味のあるタイミング」で保存する(例:1時間ごと or バリデーション改善時)
ファイルの命名ルール ノード番号・タイムスタンプを明記すると復元しやすい
冗長構成 複数箇所に保存しておく(NFS + クラウドなど)ことで障害対策にも
保存確認 「保存完了」を各ノードが確認してから次へ進むフローを設ける

💡 LLMでの応用:大規模モデルでも安心して学習継続できるように

たとえば企業内でLLMを再学習(ファインチューニング)する場面でも:

  • チェックポイントをGPU単位で管理して保存
  • 定期保存+最良性能時点の保存を併用
  • 「いつ・どのノードで・どんな状態だったか」を記録ログと紐づける

このように設計することで、途中で止まっても、そこから再開して“ムダを最小化”できます。


✅ まとめ:分散しても“状態を1つに戻せる”工夫が肝

  • 分散学習では、複数のノードで状態を「同時・正確に」保存する必要がある
  • チェックポイント戦略には、同期型・非同期型・集中管理型などの選択肢がある
  • 状態の一貫性と効率性を両立する設計が、再現性・信頼性を支えるカギになる

Best regards, (^^ゞ