Shikata Ga Nai

Private? There is no such things.

第17回:大量データの処理と分割戦略

Hello there, ('ω')ノ

~一気にやらず、ちゃんと分ける。LLMが読みやすくなる工夫~

社内に蓄積されたメール、議事録、FAQ、チャットログ、マニュアル……。 LLMを導入したいと思ったとき、多くの企業が抱える最初の壁が、

「データはあるけど、量が多すぎて扱えない」 という問題です。

そんな大量データをどうやって扱いやすくし、効率的に処理・活用するか?


📦 なぜ「分割戦略」が重要なのか?

❗ LLMには「一度に読める量」に限界がある

たとえばChatGPTでも、一度に扱えるテキスト量にはトークン数(文字数のようなもの)の制限があります。 この制限を超えると、

  • 学習時は正しく覚えられない
  • 実行時は途中で切れてしまう
  • 応答内容が安定しない

という問題が発生します。

➡ だからこそ、大量データを“頭から全部入れる”のではなく、“小さく分けて賢く使う”戦略が必要なのです。


🧠 分割戦略の基本3原則

原則①:意味単位で分ける(文・段落・話題)

ただ文字数で区切るのではなく、文の区切りやトピックごとに分割することで、文脈を壊さず処理できます。

  • ✅ NG例:「この商品はおすすめです。明日」「お届」→ 文が途中で切れる
  • ✅ OK例:「この商品はおすすめです。」+「明日お届け予定です。」

原則②:用途に応じて分ける(目的別にスライス)

データの使い方ごとに分けることで、無駄な処理や誤学習を防げます。

用途 分け方の例
チャット応答用 Q&Aごとに分割/話者ごとに分離
検索用 段落ごとに分けてインデックス化
学習用 セクション単位でトピックごとに分割
要約用 ページ単位で処理し、再構築

原則③:分割後の“つなぎ方”も考える(再構築可能性)

ただ分けるだけでなく、「あとで再利用しやすい形で分ける」ことも重要です。

  • セクション番号や見出しを保持
  • 元のファイル名や行番号をメタデータに残す
  • 元文と対応が取れるようなIDを付ける

➡ これにより、モデルの出力を元の文書に戻すことも可能になります。


🛠 実務で使える分割テクニック

✅ テクニック1:文・段落ベースの分割(自然言語処理)

  • Pythonのライブラリ(spaCy、NLTK、MeCabなど)で文単位の分解が可能
  • HTMLやPDF文書でも、段落やタイトルタグを利用すれば分割しやすい

✅ テクニック2:ルールベースのカット

  • 「●」や「■」などの記号、見出し、日付などを分割ポイントに使う
  • 例:「2024年3月1日 会議議事録」→ 1日ごとに分割

✅ テクニック3:ウィンドウスライディング(重複あり)

  • 例えば500トークンずつ+100トークン分重ねて分割することで、文脈を保ちつつ分割できる
  • よくある用途:埋め込み検索、RAG(検索拡張生成)

✅ テクニック4:メタデータ付き分割

分割する際に、以下の情報も一緒に保存しておくと便利です:

メタ情報 内容の例
文書ID 元のファイル名や文書名
セクション番号 「第3章」「2-1」など
行番号/開始位置 元のテキスト内での位置
タグ 「製品案内」「苦情」「依頼」など分類タグ

➡ LLMへの入力だけでなく、検索・管理・エラー修正にも役立ちます。


🧩 データ処理の“分割+統合”の流れ(全体像)

  1. 対象文書の収集(PDF/Word/CSV など)
  2. 分割ルールの決定(トピック単位・トークン数・日付単位 など)
  3. 前処理+分割(自然言語処理ツールで整形)
  4. メタ情報の付加(後で統合できるように)
  5. 用途に応じた整理(検索用・学習用などに分類)

✅ まとめ:LLMにとっての“ちょうどいいサイズ”をつくる

  • LLMにはトークン制限があるため、大量データは分割して使うのが基本
  • 文・段落・セクション・用途ごとなど意味を保った分け方が大切
  • 再利用しやすいようにメタ情報をつけておくと便利
  • 分割はただの前処理ではなく、「情報活用力を高める戦略の一部」

Best regards, (^^ゞ