Shikata Ga Nai

Private? There is no such things.

第16回:拡張データの質を担保するには?

Hello there, ('ω')ノ

~AIに「変な日本語」を覚えさせないための5つの視点~

データ拡張はとても便利な技術です。 しかし、拡張データが「意味が通らない」「不自然」「誤解を招く」といった状態のままLLMに学習させてしまうと、モデルの出力が劣化してしまう恐れがあります

つまり、拡張データは「増やして終わり」ではなく、「使える状態か?」を見極めて仕上げる必要があるのです。


🔍 そもそも「質が低い拡張データ」とは?

状態 問題点
意味がズレている 「返品はできません」→「返品はできます」 真逆の意味になる
日本語が不自然 「これについてはご対応しましょうか」 曖昧・文法ミス
単語だけ変えただけ 「この商品は使いやすい」→「この製品は使いやすい」 バリエーションとしては不十分
同じ表現が何度も繰り返されている 「〇〇に対応します」が多すぎる 偏りが生まれ、出力に影響
機密情報が残っている 顧客名や価格などがそのまま 法的・倫理的リスク

✅ 拡張データの「質」を担保する5つの視点

① 意味が変わっていないか(意味保持チェック)

  • 元の文と拡張文を並べて比較する
  • GPTや類似度スコアで「意味が等しいか」自動チェックも可能

チェック例(GPTに依頼):

「次の2文は意味が同じですか?」

  • 文1:ご返金には応じかねます。
  • 文2:ご返金いたします。 ➡ 「異なる」と回答されればNG!

② 文法・言い回しが自然か(言語品質チェック)

  • 不自然な文末や助詞の使い方がないかをチェック
  • 自動ツールの活用がおすすめ  例:LanguageTool、日本語校正くん、ChatGPTによるレビューなど

ポイント:

  • 「○○させていただきます」は過剰な敬語か?
  • 「~ことになります」は他責で曖昧か?

③ 多様性があるか(バリエーションチェック)

  • 拡張文がすべて「同じ型」「似た単語」になっていないかを確認
  • 類似度スコアや、頻出語の可視化などが有効

NG例: すべて「〇〇いただきありがとうございます」で終わる文ばかり → 出力の偏りに

改善: 同じ意味を、カジュアル/敬語/間接表現など複数の文体で展開


④ データに偏りがないか(分布チェック)

  • 全体のジャンル・話題・意図が「一部だけ偏っていないか」を確認
  • カテゴリごとに件数を集計し、「営業文ばかり」「クレーム文ばかり」などの偏りに注意

例:

カテゴリ 件数
お礼 50件
クレーム 200件
案内 30件

→ かなりの偏り。補完すべきカテゴリを把握できる。


⑤ 個人情報・機密情報が残っていないか(セキュリティチェック)

  • 氏名、電話番号、金額、住所などが自動生成に紛れ込むことがあります
  • 正規表現やマスキングスクリプトで検出・除去を

例:

  • 「山田様」「080-1234-5678」「1,500円」などは伏せ字に → 「[顧客名]」「[電話番号]」「[価格]」

🛠 拡張データを品質保証するためのステップ

ステップ1:自動生成(バックトランスレーション/T5など)

ステップ2:自動チェック(文法・意味・重複)

  • Python/ChatGPT/NLPツールなどを組み合わせる

ステップ3:人による確認(ランダム抽出・例文レビュー)

  • 全件は難しいため、5〜10%でも確認する

ステップ4:問題の傾向を記録し、再生成や修正に活かす


✅ まとめ:拡張は“量より質”、そして確認が命

  • 拡張データは「自動で増やす」だけでなく「人の目で仕上げる」が重要
  • 意味・表現・偏り・文法・セキュリティの5視点でチェック
  • 自動化ツールと人手チェックを組み合わせて、信頼できる拡張データを作る
  • 品質を担保することで、モデルの出力も自然かつ多様に!

Best regards, (^^ゞ