Hello there, ('ω')ノ
~AIに「変な日本語」を覚えさせないための5つの視点~
データ拡張はとても便利な技術です。 しかし、拡張データが「意味が通らない」「不自然」「誤解を招く」といった状態のままLLMに学習させてしまうと、モデルの出力が劣化してしまう恐れがあります。
つまり、拡張データは「増やして終わり」ではなく、「使える状態か?」を見極めて仕上げる必要があるのです。
🔍 そもそも「質が低い拡張データ」とは?
状態 | 例 | 問題点 |
---|---|---|
意味がズレている | 「返品はできません」→「返品はできます」 | 真逆の意味になる |
日本語が不自然 | 「これについてはご対応しましょうか」 | 曖昧・文法ミス |
単語だけ変えただけ | 「この商品は使いやすい」→「この製品は使いやすい」 | バリエーションとしては不十分 |
同じ表現が何度も繰り返されている | 「〇〇に対応します」が多すぎる | 偏りが生まれ、出力に影響 |
機密情報が残っている | 顧客名や価格などがそのまま | 法的・倫理的リスク |
✅ 拡張データの「質」を担保する5つの視点
① 意味が変わっていないか(意味保持チェック)
- 元の文と拡張文を並べて比較する
- GPTや類似度スコアで「意味が等しいか」自動チェックも可能
チェック例(GPTに依頼):
「次の2文は意味が同じですか?」
- 文1:ご返金には応じかねます。
- 文2:ご返金いたします。 ➡ 「異なる」と回答されればNG!
② 文法・言い回しが自然か(言語品質チェック)
- 不自然な文末や助詞の使い方がないかをチェック
- 自動ツールの活用がおすすめ 例:LanguageTool、日本語校正くん、ChatGPTによるレビューなど
ポイント:
- 「○○させていただきます」は過剰な敬語か?
- 「~ことになります」は他責で曖昧か?
③ 多様性があるか(バリエーションチェック)
- 拡張文がすべて「同じ型」「似た単語」になっていないかを確認
- 類似度スコアや、頻出語の可視化などが有効
NG例: すべて「〇〇いただきありがとうございます」で終わる文ばかり → 出力の偏りに
改善: 同じ意味を、カジュアル/敬語/間接表現など複数の文体で展開
④ データに偏りがないか(分布チェック)
- 全体のジャンル・話題・意図が「一部だけ偏っていないか」を確認
- カテゴリごとに件数を集計し、「営業文ばかり」「クレーム文ばかり」などの偏りに注意
例:
カテゴリ | 件数 |
---|---|
お礼 | 50件 |
クレーム | 200件 |
案内 | 30件 |
→ かなりの偏り。補完すべきカテゴリを把握できる。
⑤ 個人情報・機密情報が残っていないか(セキュリティチェック)
- 氏名、電話番号、金額、住所などが自動生成に紛れ込むことがあります
- 正規表現やマスキングスクリプトで検出・除去を
例:
- 「山田様」「080-1234-5678」「1,500円」などは伏せ字に → 「[顧客名]」「[電話番号]」「[価格]」
🛠 拡張データを品質保証するためのステップ
ステップ1:自動生成(バックトランスレーション/T5など)
ステップ2:自動チェック(文法・意味・重複)
- Python/ChatGPT/NLPツールなどを組み合わせる
ステップ3:人による確認(ランダム抽出・例文レビュー)
- 全件は難しいため、5〜10%でも確認する
ステップ4:問題の傾向を記録し、再生成や修正に活かす
✅ まとめ:拡張は“量より質”、そして確認が命
- 拡張データは「自動で増やす」だけでなく「人の目で仕上げる」が重要
- 意味・表現・偏り・文法・セキュリティの5視点でチェック
- 自動化ツールと人手チェックを組み合わせて、信頼できる拡張データを作る
- 品質を担保することで、モデルの出力も自然かつ多様に!
Best regards, (^^ゞ